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あら?
ちょっと、もたもたしてるうちにひづけがかわっちゃったわ…
というわけで日付改ざんで月くん追悼SS…です!
さっきピクシブにアップしたんですが、
ピクシブ、多分登録とかしてなくても小説読めるみたいだしいいかなとも思ったのですが、まあこの辺にも載せてみます

なんか、死んでからも生きてる時と変わらずにガヤガヤやってる感じが書きたかったのね

そしてまたワタリが…(すみません!)



ぬるぬる・・じゃなかった。
ぬるい月Lです( ´v`)






   出せない手紙





「久しぶりですね、月くん」

 …夢かな。
 なんて思いながら目を開けると、投げかけられた言葉通り、すごい懐かしい顔がそこにあった。


「…竜崎?」
「はい、覚えていただいていて、光栄です」


 人を食ったような慇懃無礼な喋り方も表情も、記憶のまんまだ。
 すごい明瞭なイメージだな…なんて考えながら、僕は彼に少し近づいた。


「…久しぶり」
「惜しかったですね」
 小さく肩をすくめる。
「…何が?」
「あと少しでニアに勝てたじゃないですか。彼が勝った時は思わず拍手してしまいましたけど、よく考えたら負けた方と、こうしてすぐ言葉を交わすことになるんだったんだなーと思うと、それもちょっと気まずいというか…」
「は?」


 そこで、竜崎のセリフをきっかけにさっきまでの記憶が僕の中に一気に蘇ってきた。
 そうだ、僕は、ニアに裏の読み合いで負けて…そしてリュークにデスノートに名前を書かれて…あいつ…!


 いや待て…
 じゃあ僕は、死んだのか…?


「竜崎…じゃあ…」
「はい?」
「僕は…死んだのか?死んでるのか?」
「そうですね、私も死んでます」


 見ると僕らは宙に浮いている。下にさっきまで一緒に居た奴らが何やら言い合っている。
 しかも…ん?さっきまでは居なかった奴が…。
 あのニアの白いもしゃもしゃ頭を覗き込むようにして若い男が二人立っている。
 と、彼らがこっちを見て浮かび上がってきた。


「L、オレらもう行くよ」
「じゃーね」


 一人は恐らくメロで、もう一人はゴーグルをかけた、メロと同じくらいの若い男。多分メロが清美を誘拐した時に清美のSP打たれて死んだ男だ。


「もう行ってしまうのですか?」
「ああ、もう残ってられないようだ…キラも負かすことができたし、ほら」
 メロが片手を上げてひらひらと振る。その指先が薄っすらと透けているのを見て、僕は腹底が冷えるような気がした…ってもう身体ないんだけど…


「じゃーねっ、L」
 ゴーグルの男も手を振って、メロと一緒に上の方に上がって行って、倉庫の天井を越えてやがて見えなくなった。


 


「…で…おまえはここで何してるんだ?」
 僕は改めて竜崎に向き直った。
 つい二日前死んだあいつらが、あっさり成仏(?)したのに、竜崎は五年も実は僕の周りでうろうろしてたっていうのか?


「ええその…どうも、執着が強いと、霊?って言うんですかね?残ってしまうらしいんですよね、この世に」
「一体何がそんなに心残りだったんだ?僕に負けたことか?」
「そんなのどうでもいいんですよ」


 竜崎は急に恨みがましい目つきになって、指をくわえた。


「どうでもいい?」
「私の心残りは…月くん、あなたと手錠で繋がってたせいで、私は死ぬ前の一年間ずっと、スイーツバイキングに行けなかったんですよ、どうしてくれるんですか」
「は?」
 僕は思わず眉を寄せた…って身体はもうないけど。いやこうして竜崎の姿が見えてるってことは僕の姿も彼には見えているのだろうし、表情も伝わっているだろう。


「だっ…いや、おまえ、僕と繋がってたのなんてたったの三か月ぽっちじゃないか、その前の九か月は知らないよ」
「キラ事件のせいで忙しくてスイーツどころじゃなかったんじゃないですか、責任とって下さいよ!!」
「スイーツどころじゃなかったぁ!?おっまえ、散々甘いもの食いまくってたじゃないか!大体僕が死んでから責任とれって言われたってどうしようもないだろ、せめても生きてるうちに言ってくれればお供えするなり身体を貸すなりしてやれたろうに」
「いくら話しかけたって、月くん返事してくれなかったじゃないですか」
「話しかけられてたなんて全然わからなかったよ」


 ってゆーか、ここで話しててもしょうがない。倉庫の中は陰鬱としてて気が滅入るばっかりだ…僕は竜崎に背を向けて倉庫を出た。おお、壁も通り抜けられる。


 うーん。そんなに長い間演説してたつもりはなかったんだけど、外は綺麗な夕焼けになっていた。


 …それにしても、僕はどうしてここに居るんだろう。
 竜崎は執着があるとここに残ってしまうと言ってたけど、何の心残りがあるんだろう、僕は。妙に急かされるようなこの感じ。竜崎の顔を見てから、焦燥は大きくなるばっかりだ。


「月くん」


 僕の後をついてきたらしい竜崎が、背後からまた話しかけてくる。
「月くんは一体何がそんなに心残りなんですか?そんなに神になりたかったんですか?」
「いや…」


 死ぬ前はあんなにニアに勝つことに拘り、キラとして世界中を掌握することに拘っていたのに、そんな気持ちは肉体と一緒にどこかに行ってしまったようだった。これが煩悩からの解脱ってやつなのか?いやしかし…煩悩がなくなったにしては…


「? 何か?」
 竜崎に問われて僕は慌てて彼から目を逸らした。
 いつのまにか彼をじっと見つめてしまっていた…ヤバイヤバイ。


「竜崎は、スイーツバイキングに行けなかったから残ってるってさっき言ったよな」
「はい」
「じゃあ、もう永遠に成仏できないんじゃないのか。身体がなくちゃあ、スイーツなんて食べられないだろう」
「それがそうでもないんですよね」
 竜崎は空っとぼけた顔でそう言った。
「ある条件がそろった人間には、乗り移るというかとり憑くというか、身体を使わせてもらうことができるようなんです、我々」
「そうなのか?じゃあこの五年間に…」
「実はいろいろな方の身体をお借りして数々のスイーツを味わっておりました」
「満足しろよ」


 僕はそわそわと落ち着かない気持ちになった…
 なんだ?なんだっけ?でもとにかく部屋に帰らないと。
 部屋に戻ってあれをなんとかしないと…あれ…あれってなんだっけ?


 こうしちゃ居られない。僕は身を翻して空を駆けた。まるで空中散歩みたいだ。うしろから竜崎もふわふわ浮いてついてくるのが分かる。


 ほどなくして僕は、ミサと同棲してた僕らの部屋の中に立った。竜崎も一緒だ。


「生意気ですねえ、私よりも若いくせにこんな最上階の良い部屋に…しかも大学生のころから…」
「空々しいなあ、どうせ僕が生きてる頃から不法侵入してたんだろ」
「ええまあ実は」
「おまえ、あのワタリっていう爺さんはどうしたんだよ」
「彼はとうの昔に転生しましたねえ」
「へえ…」


 僕は部屋の中をうろついて、目的の物を探した。
 目的の物…なんだっけ。目的の物…
 手紙、そう、手紙だ。誰からの?
 いや、僕が書いた手紙か?誰への?
 焦りはこんなに顕著なのに肝心の物が思い出せない。
 大体、引き出しや机も触れないので、隠してある物なんかどうしたって探せない。しばらくうろうろしたあと、僕は諦めてリビングに大の字になった。


「あーあ」
 なんであんなに新世界の神なんかになりたかったんだろうな。
 死んでしまった今となっては、悔しさももうすっかりどこかに行ってしまって、すっきりとしてとてもいい気分だ…と、そこで竜崎が僕の顔を覗き込んだ。


「月くん、なんでここに戻ってきたんですか」
「………なんだっていいだろ、お前こそ僕に付きまとうのはやめろ」


 ムッとして身体を起こしたところで、玄関からガチャガチャという音が聞こえてきた。


「たーだいまー…って、誰もいないか~そうだよね~」


 ミサだ。独り言を言いながら入ってくると、服を脱ぎ始めた。
「ホテルのスイートもいいけど~、やっぱりおうちがいっちばーん」


「おや?」
 隣で竜崎がミサに向かって身を乗り出した。
「なんだよ…女の着替えを堂々と…って今更か」
「今なら彼女の身体を借りられますね…ちょっとお借りしてケーキ食べに行っちゃおうかな…あ、でも弥は甘いのは太るから控えていると言っていましたね。さすがに可哀想ですかね」
「えっ?」
 僕は竜崎と彼女を見比べた。
「身体を借りられる?え、な、なんでだよ?」
「彼女、もうすぐ死にますね。寿命が残り少ない人間は憑りつける条件の一つです」
「え!?」


 僕は驚いてミサの顔をまじまじと眺めた。
 もうすぐ死ぬ!?
 いやでも、そんな意外でもないか、寿命随分削らせちゃったし…でも今となってはなんだか彼女にも申し訳ない。こっち側に来たら謝るか…ってそれまで僕の執着が解消されなければだけど。


「あっ」
 ということは、探し物もミサに乗り移れば出来るってわけだ!
 僕は躊躇なく彼女の肉体に突進した。
 うわっ…なんだか、重いヘドロの海でもがいてるみたいな苦しさが全身を捉える。無理やり近くの物に目の焦点を合わせてるみたいな感覚で…


 なんとか、ピントが合った。
 
「月くん…不作法じゃないですか、ミサさんに断りもなく」
「何言ってるんだよ、どうせ僕らの声はミサには聞こえないんだろ。それよりおまえ、出てけ」


 僕は竜崎を払いのける仕草をしながら、箪笥や机の引き出しを開けて中を探し始めた。
 あれ…あれを、処分しなきゃ。
 あれ…なんだっけ?
 よく思い出せない。でも残しちゃおけない、絶対に!


 探して探して探して探して探して。


 やけに疲れるのが早い…自分の身体じゃないからかな、それともミサの奴に体力がないせいか。
 とにかく机・リビング・収納・箪笥・絨毯の下から天袋まで全部探してひっくり返して。


「…あった!!」


 僕の部屋。
 一時、デスノートの隠し場所にしてた引き出しの奥の奥に、宛名も何もない真っ白な封筒ひとつ。


「…それ」
「うるさい、黙ってろ」
 厳重に封されたそれを、びりびり破って開ける。中には二つに折られた便箋が一枚…
 何書いた?誰あて?
 嫌な予感がしたけど、見ないではいられなかった。


 …真っ白だ。


 


「…月くん?」
 竜崎が怪訝な声色で僕を呼ぶ。
 なんだろう、これ。
 でも、確かにこれが僕の執着の原因だ。
 これを残したまま死ぬに死ねない、これが僕の成仏できない原因だ。


「よし、燃やそう…竜崎はどっか行けよ」
「まあ、いいじゃないですか別に」


 とにかくこれを一刻も早くこの世から消してしまわねば。
 もう、なんで思い出せないんだ、脳細胞を抱えてないってこんなにこんなに不安定なのか!?


 僕はミサの身体に入ったまま、真っ白い封筒と便箋を持ってキッチンに向かった。
 コンロの火をつけてそこに便箋をかざす。


 …と。


「あ…」
 僕の背後から覗き込んでた竜崎が、思わずという感じで声を漏らした。
 火がついた便箋に、茶色く文字が浮かび上がる。そうだ、僕は、誰にも見られたくなくてでも形にしたくてたまらなくて、乾いたら字が消えるインクで…
 五年前に湧き上がるままに書き殴った衝動が、一瞬浮かび上がって、次の瞬間には燃え尽きてゆく。


 


『竜崎、竜崎、竜崎。


 竜崎、会いたい


 会いたい会いたい会いたい 竜崎 会いたい


 竜崎竜崎竜崎 会いたい 会いたい』


 


 う、うわあああ…。
 誰かに見られる前に処分できてよかった…ミサの頬が熱くなってるのを感じる。
 竜崎には見られたけどどうせこいつには隠してもしょうがない。


 僕はおおまかに散らかした部屋を片付けると、ソファに座って、ミサの身体から出た。


「…ん…あれ?ミサ、どうしてたんだっけ…」
 彼女がぼんやりと呟いてるのを背にして、僕は部屋を出た。すっごい疲れた。
 ああもうすっかり夜中だ。


「…月くん…」
 僕はゆっくり竜崎の方に振り返った。
 あーもう。絶対今、僕の頬もさっきミサに入ってた時みたいに赤くなってる。


「どーせおまえ、あれに何が書いてあるか知ってたんだろ?」
「ええ…月くんが書いている時もずっとそばにいて、見てました」


 竜崎が死んですぐ。二か月くらいは僕も、あのLに勝ったってことで優越感に浸ってたんだけど、徐々に徐々に…彼の声や仕草や体温や、眼差しや肌や唇や。そんな全てが恋しくなってきてしまったのだ。それはもう絶望的なほどに。あんな手紙を隠していなきゃいられなかったくらいに。


「月くん」
「うるさいよ」
「月くん…私、ちょっと嘘をつきました」
「え?」


 竜崎が、まるでいたずらっ子みたいな瞳で横から僕を覗き込んでくる。


「私の心残りは、スイーツバイキングじゃなくて…本当は、月くんともっと一緒に居たくって」
「…そう、じゃあもう満足したんじゃないのか?五年間も付きまとってたんだろ」
「いえ」
 彼は大きく肩をすくめると、少し皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「あなたと、言葉を交わしたかったんです、もっと、もっと。ですからニアが勝った時は思わずニアに礼を言ってしまいました…」
「…嫌味なやつ…」
 僕も苦笑した。
 まあ今は僕も、これ以上こいつを待たせなくってよかった、と素直に思える。


「じゃ、お前が満足するまで一緒に居てやるよ」
「いいんですか?長くかかってしまうかもしれませんよ」
「かまわないさ」


 いつまででも。
 いつまでも。


 僕は差し出された白い骨ばった手を取った。
 トクン、と。
 もうないはずの心臓が、五年ぶりに暖かい拍動で揺れた。


 


 


 


 終

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