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月誕生日おめでとう~!
生憎、帰省・原稿と重なって何も出来なかったので(去年に引き続き…)今年も電車の中でSSを書いて日記にアップします(^_^;
今回はまだ慣れてない携帯なのでちょっとしんどい…(>_<)
悪魔の日記のその後設定です。
ずっと考えてたのですが、全然ネタを思いつかなくて…。実家であったことをちょっとヒントにして考えました;

とかやってるうちに、電車の中で三時間みっちり携帯いじってたのに書き終らなかったので、部屋に帰ってからアップ;ひ~…こんな慣れない携帯で三時間でSS一本とか無理なんじゃあ…;
サイトのほうにアップしようかと思ったのですが、表と裏と携帯サイトと三個分とか今日中に無理なので、一旦ブログに上げときます
(タイトルまだ決まってないしな…)

悪魔の日記も、読み返したら直さなきゃならないとこがたくさんある…(スミマセン…);;

月、お誕生日おめでとおおおお!!




  パタン。パタン。

 まだ覚醒しきっていない月の手が虚しくシーツを叩いた。
  隣に居るはずの同居人が消えているという事態に気づき、ようやく月は寝ぼけ眼をこじ開ける。
  二つ並んだ枕の片方は頭の乗っていた痕跡の凹みだけを残し、すでに持ち主の体温すらも失っていた。

「竜崎」
  月は思わず身体を起こして声を上げた。
  もう彼と暮らし始めて一ヶ月になるけれど、こんな朝があった試しはない。竜崎が先に目を覚ました時は、月の腕の中や胸の上に、身体を滑り込ませてもう一度寝てしまうか、もしくは起こしてくれるのが常で、月が先に起きた時は、彼が目覚めるまで見守って「おはよう」と声をかけるか、そっと抱きしめてキスして起こすかだ。
 何にせよ、毎朝好きなだけ抱擁しあって、時間がなくなってからやむなくベッドを出るのが彼等の日常だった。
 もしやとんでもなく寝坊してしまったか?と腕時計を見るがそんなこともなくいつもと同じ時間だ。

「竜崎?」
  別の部屋か?と思い、声を張り上げ名を呼ぶと、ぺたぺたと足跡が近づいてきた。
「月くん…起きてしまいましたか」
「竜崎、よかったどこか行ったかと思った」
  月がホッとして、むず痒い目元を擦ろうとすると、それを竜崎が止めた。
「目が傷付きます。ちょっと待ってください…睫毛が入ってます」
  竜崎は自分の指先をペロリと嘗めて濡らし、もう片方の手で月のまぶたを開かせて器用に睫毛を取った。

「ほら三本も」
「ありがとう…今日は早起きして何かしてるの?」
「実は朝食の支度をさせていただこうかと思いまして」
「朝食?…それは一体どうした風の吹きまわし?」

  月は驚いて聞き返した。
  一応自炊しているものの、普段は炊事全般と家事ほとんどを月が行っている。大体竜崎はスィーツ以外を自分から食べようとしないので食事を作るはずがない。腹が減ったら砂糖でも嘗めてればいいと平気な顔で言う男だ。

「ええ…その、一年に一度くらいはそんな日があってもいいかと思ったんです。分かるでしょう?」
「…ああ」

  そういうことか、と月は理解した。今日は自分の誕生日だ。ゆうべ日付が変わった時も竜崎は「おめでとうございます」と言いながらキスしてくれたのだ。

「朝食って、何作ってるんだよ?見に行っていい?」
「あ、ちょ…ダメです、出来てから呼ぶのでそれまで寝ていて下さい!」
「…わかった」

 月は頷くと、もう一度もそもそと布団に潜り込んだ。幸い今日は日曜で、大学に行く必要もない。

  ふたたびキッチンに戻った竜崎が立てる包丁や食器の音をぼんやりと聴いているうちに、月はいつのまにかまた眠ってしまっていた。




「…ん。月くん」

  自分を呼ぶ声に月は目を開けた。竜崎が覗きこんでいる。
「…あれ?」
「出来ましたよ、朝食」
「ん?うん…」
  伸びをしながら身体を起こし、月はベッドからおりた。時計を見ると11時半を少し過ぎたところだった。
「また寝ちゃってた。随分かかったんだね、何作ってたの」
「それは見てのお楽しみです」

  服を着替えて食卓に着くと、月の前には豪華な洋風の料理やパンが並んでいた。
「えーっ、すごいじゃないか、これ竜崎が作ったの?」
「はい、見よう見真似で味の保証は出来ませんが」
「嬉しいなあ」

  月はフォークをとると、自分の前にある皿の料理に突き刺した。どうやらアスパラを鶏肉で巻いて焼いたもののようだ。

「いただきます!」
  口に運びしばらく咀嚼したのち、月の笑顔がたちまち萎れて消えた。
「竜崎…」
「はい?」
「味がしないんだけど」
 ためしに他のものも口に入れてみるが全て同じだ。改めて見るとどの皿も白いものばかり乗っている。
  竜崎の作った料理には調味料がまったく使われていなかった。

「ああ、味付けはお好みでどうぞ」
  竜崎は平然と述べる。
「その為にほらここに、塩、コショウ、ソースとマヨネーズも。月くんの好きなお醤油もあります」
  そう言いながら、竜崎は自分の皿にハチミツを垂らしはじめた。

「…あとからソースとかだけかけても美味しくないよ」
「そうでしょうか、私は以前からこの方法の方が合理的だと…」
「分かった、分かったよ」 降参のポーズを取りながら、月は醤油を取って鶏肉にかけた。
「この料理が僕らが出会う前の互いの人生だとか、僕のことを塩と同じくらい大切だとか言うんだろ」
「リア王ですか」
 竜崎はニヤニヤしながら蜂蜜浸しのジャガイモを口に入れた。

「それにしても何故朝食なんだ?もうお昼じゃないか…こんな手間のかかるものを作る気だったんなら、最初から昼食にしてさ…」
「だってお昼は…」
  何か言いかけて竜崎は、半開きの口のまま固まった。

「あの…月くん…すみません…」
「ん?」
「今日、お昼を誘われていたのに、料理に夢中でお伝えし損ねていました…申し訳ないです」
「は?」
  月は間抜けな声を出した。
「誘われたって誰に?」
「月くんのご家族です…私を加えて五人で食事しようと…」
「どこで?」
「帝東ホテルのレストランです…12時の予約とか」
「嘘!?」
  月は時計を見た。12時まで既に残り10分を切っている。

「じゃあもう出ないと…行こう竜崎!」
「ああ…すみません、許してください、とても私はご家族の方に顔向け出来ません、行くならどうぞ月くんお一人で…」
「馬鹿言うなよ、ほら!」

  月は竜崎の作った料理にラップをして冷蔵庫に片付け、よそ行きの服に着替えると、嫌がる竜崎を引きずって部屋を出た。
駅の近くまで走り、タクシーを捕まえ飛び乗った時はもう12時を30分ほど過ぎていた。




「お兄ちゃん、おそーい!一時間の遅刻だよお?」
  妹の粧裕に開口一番詰られて、月は「ムッ…」と口をへの字にした。
「…悪かったよ…」
「まあまあ、いいじゃないか、今日の主役は月なんだから」
  総一郎が子供達をなだめる。

「申し訳ありません…私が悪いんです…月くんに伝え忘れてしまって…ホントにすみません…」
「あらそうなの?」
  幸子が呑気な声を出す。
「お詫びに今日のお会計は私が持ちますから…本当に申し訳ないです…」
「いや竜崎、そこまで気を使うことはない」
「そうだぞ…お前、なんでそんな傾いてるんだ…座れよ」
  総一郎と月に促され、竜崎も席に着いたが、いつもの座り方に加え膝を抱え込んだので、竜崎の顔はほとんど見えなくなった。


「あー…月、同居はどんな感じだ?月…うまくいってるのか?」
「ああ、うん…いいよ、大分」
  総一郎の言葉に月も困ったように竜崎を伺いながら応えた。
「家事は分担してやっているのか?」
「あ、うん…」
  竜崎の肩がピクッと動いたのを、月は困ったなと思いながら見た。

「き、今日も竜崎が早起きして朝ごはん作ってくれたんだ」
「まあ~本当?粧裕も見習わなきゃダメよ?」
「はあ~い」
  悪気のない幸子の言葉に竜崎がブルブル震え出すのを、月は顔を引き攣らせながら見遣った。





食事が終わり、月の家族と別れて部屋に帰ると、竜崎はソファーに乗り、背もたれの方を向いて膝を抱えた。

(動物みたい)
  内心吹き出しながら、月は手に下げた箱を軽く持ち上げた。

「竜崎、さっき買ってきたケーキ食べよ」

  月の言葉に竜崎はしばらく沈黙したあと、小さく「私は役立たずです…」と答えた。
「何言ってんの」
「言付けすらできません…食事を作っても月くんに美味しいとは言ってもらえなかった」

(しょーがないなあ…)
  月は買ってきたケーキを皿に乗せてフォークで一口分とると、竜崎の口元に近づけた。
「竜崎、ほら」
  竜崎がちらりと月を見る。

「あーん」
  口元につかんばかりに寄せられたケーキを、竜崎は思わずという感じで口に入れた。
「美味しい?」
「…美味しいです」
  月は竜崎の手にフォークを持たせると、ケーキの方に身体を向けさせた。

「さあ食べて?」
「…頂きます…」

  鬱状態からあっさり脱出した竜崎は、フォークでもう一口…と運ぶ。

「美味しいですねえ」
「だろ?このあいだ、大学で話題になってたお店なんだ、評判でさあ。話聞いてて、絶対竜崎の好みだと思ったんだ」
 月はニコニコしながら竜崎を見ている。
  フワ~ンとした笑顔になった竜崎が、三口目を口に運ぼうとフォークを伸ばしたところで、月は笑顔のままその手を掴んだ。

「…月くん?」
「ケーキはもういいよ」
「?」
 月は目をまるくして戸惑う竜崎の唇をチュッと啄ばんだ。そのままソファの上に押し倒して、頬と口を行ったりきたりで、キスを繰り返す。口の端についていたクリームも、竜崎の舌に残っていた甘みも全部嘗めとってしまう。
「あの、月くん…」
「なに?」
「ケーキ…食べたいです…」
「んー…でも、今日は僕の誕生日なんだから僕の希望を優先して?」
「うー…」
 竜崎は、ちらちらとケーキに視線を走らせながら、月の愛撫を拒むこともできず、泣きそうな顔をしている。

(可愛いなあ)
 月は内心やに下がりながら、竜崎にキスを繰り返した。
 おあずけをくらって困り顔の竜崎は、月のサドッ気を掻き立てる。こんな顔されると、もっともっといじめたくなってしまう…二口だけケーキを食べさせたのも勿論わざとだ。少しでも食べてしまえば誘惑への自制心は簡単に瓦解する。

(言付け忘れの分もふくめて、今日は僕の方法で誕生日を楽しませてもらうよ、竜崎♪)
「月くん…あン…ケーキ~」

 19歳になったばかりの満面笑みの月の下で、竜崎が可愛らしい泣き声を上げた。


END



・昼食に両親と寿司に誘ったのに断ってきたはずの兄が、実家に戻ると一人寂しく弁当を食べていた
・朝、目覚めると妹が早起きして朝ごはんを作ってくれていた
・結構しっかり味ついてんなと思いながら食べてたら「味薄いね」とか言っててオドロイた
・ケーキばっか食ってた

など、実家に帰省していた間にあったことをもにゃもにゃとちょっとずつ題材にして、かいてみました…
あの、いつも誕生日企画物は祝われるほうがなぜか微妙に可愛そうなことになるので、今回はそんなことにならないように気をつけたつもりなんですがやっぱりちょっと中盤あたりまで可哀想かな…
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2007/02/10
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